共働き家庭にとって切実な「小1の壁」問題。共働き家庭の増加とともに、最近では学童の待機児童数が増えていることが問題になっています。
政府は小1の壁を打破すべく、2014年に「放課後子ども総合プラン」を策定し、学童の待機児童対策を進めてきました。2018年には「新・放課後子ども総合プラン」を発表し、引き続き子供の放課後の居場所の確保や学童の整備を進めています。
あまり耳慣れない「新・放課後子ども総合プラン」とはどんな一体どんな計画なのでしょうか。本当に学童の待機児童は減るのでしょうか。
ここでは、厚生労働省・文部科学省による「新・放課後子ども総合プラン」について詳しく解説します。
もくじ
一体なぜ、政府が「新・子ども総合プラン」を策定したのでしょうか。そこには小1の壁の社会問題化があります。子供が小学生になると、ワーママの仕事と育児の両立が厳しくなる「小1の壁」。小1の壁で一番の問題が、放課後の子供の預け先です。
パパやママが就業後お迎えに来る時間まで預かってくれた保育園とは違い、小学1年生の帰宅は午後3時ごろになります。放課後は学童保育に子供を預かってもらうことになりますが、共働き家庭の増加で学童に入れない家庭が増えているのです。
親の帰宅時まで子供を見てくれる預け先がなく、ワーママが仕事を続けられないことが社会問題化しています。少子高齢化で働き手の確保が課題になる中、政府も小1の壁を何とかしようと、学童の待機児童対策に乗り出したという背景があります。
2014年に策定された「放課後子ども総合プラン」に引き続き、2018年9月、政府は「新・放課後子ども総合プラン」を策定しました。放課後の子供の預け場所や居場所を確保し、学童の待機児童の解消を目指しています。
「放課後子ども総合プラン」は「新・放課後子ども総合プラン」の前身の計画で、小1の壁対策として、学童の待機児童解消に向けて厚生労働省と文部科学省が2014年に策定した計画です。
すべての小学生が放課後を安心安全に過ごすことができ、スポーツや遊び、工作など、いろいろな活動や体験ができる場の提供を目的としています。共働き家庭の小学生を対象にした「放課後児童クラブ」、すべての小学生が対象の「放課後子ども教室」の整備を実施してきました。
「放課後子ども総合プラン」で放課後児童クラブ30万人分の目標はほぼ達成されましたが、まだまだ学童は不足しています。そこで政府は2018年、引き続きの計画である「新・放課後子ども総合プラン」を策定しました。
新プランでは、まず2019年から2021年までに放課後児童クラブ約25万人分を整備し、学童の待機児童を3年間で解消し、その後さらに2023年までに5万人分の整備をする予定です。
また、すべての小学校区において、共働きが対象の「放課後児童クラブ」と共働きかどうかを問わずすべての子供を受け入れる「放課後子ども教室」を整備。児童クラブと子ども教室が連携したり、2つが一体化した学童施設が整備されることになっています。児童クラブ、子ども教室ともに場所は小学校の空き教室など、小学校内に設置されることになっています。
2014年の「放課後子ども総合プラン」で放課後児童クラブ30万人分の受け皿を確保しましたが、学童の待機児童は増加。共働き世帯も増えて、さらなる学童のニーズが予想されるため、新プランで2023年までにさらに放課後児童クラブ30万人分の整備を予定しています。
また、共働きかどうかを問わず、すべての小学生を受け入れる放課後子ども教室も整備し、共働きの子供が対象の放課後児童クラブと一体型の施設の整備も進められます。放課後児童クラブ、放課後子ども教室ともに主に小学校で開設される予定です。
放課後児童クラブは 厚生労働省が管轄する公立学童で、利用できるのは共働き家庭の小学生です。 放課後児童クラブは自治体が運営する「公設公営」のほか、自治体が補助を出してNPOや父母会が運営する「公設民営」があります。
放課後児童クラブの費用は月数千円で、平日の預かり時間は授業が終わってから18時までの所が多く、19時ごろまで延長が可能な所もあります。夏休みなどの長期休暇は朝から1日預かってもらえます。
専門資格を持った学童指導員が配置され、子供たちはおやつを食べて遊んだり、宿題をしたりして過ごします。
放課後子ども教室は文部科学省が管轄する施設で、共働きか否かを問わずすべての小学生を利用対象にしています。 運営日数は年間125日程度で、いつ開所するかの決まりは特にありません。毎日利用できるわけではないので、臨時で利用したい場合は注意が必要です。
放課後子ども教室の費用は原則無料。放課後子ども教室では遊び場を提供したり、地域のボランティアと一緒に工作やお菓子作りなどを体験したり、スポーツを楽しんだりします。
「放課後児童クラブ」は「公立学童」とも呼ばれ、認可保育園のように自治体が運営したり補助を出したりする「公設公営」「公設民営」の2種類があります。いわゆる「民間学童」は、無認可保育園のように企業などが運営する「民設民営」という種類になります。
放課後児童クラブに比べると民間学童の費用は高く、月数万円かかることが多いです。しかし、放課後児童クラブより預かり時間が長かったり、学童内で英会話やプログラミングなど習い事ができたり、家まで送迎してくれたりと、共働き家庭にとってありがたいサービスを提供する所もありますよ。
「放課後子ども総合プラン」「新・放課後子ども総合プラン」により放課後児童クラブの整備は進んでいますが、学童施設が増えても指導員が不足している現実があります。
人手不足で放課後児童クラブの指導員を確保するのが難しいという自治体の声を受け、2019年5月に放課後児童クラブ運営の基準を緩和する法案が可決されました。
これまでは一教室あたり常時2人以上の職員を配置する基準でしたが、2020年度からは自治体の判断によっては1人の職員による運営が可能に。少ない指導員で学童が運営可能になるこの基準緩和には、反対の声が多くあがっています。
放課後児童クラブの現場や保育の専門家、保護者からは、学童保育の安全性や保育の質の低下を心配する声が聞かれます。
小1の壁を乗り越えるために必要不可欠な、放課後の預け先。まだまだ預け先は不足していますが、政府による「放課後子ども総合プラン」「新・放課後子ども総合プラン」の実施によって、学童が増えつつあります。
また、企業などが運営する民間学童もじょじょに増えていて、預け先のさまざまな選択肢を選ぶことができるようになってきました。
子供が放課後どのように過ごしたいか、送り迎えはどうするかなど各家庭によってニーズは異なります。 家庭にあった預け先を見つけるため、子供とも話し合ってしっかり情報を収集し、充実した放課後を過ごせる場所が見つかると良いですね。
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