子供と過ごす時間はかけがえのないものですが、これまでと同じペースで仕事に向き合えなくなったワーママ生活に対し、なんとも言えない歯がゆさを感じる人もいることでしょう。
今回ご紹介するワーママのSさんは、「育児に軸足を置きたいので時短勤務にはするものの、仕事へのスタンスはフルタイム時と何も変わらない」と言います。
ここでは、離職から10年のブランクがありながらも再就職を果たし、大きな裁量をもって仕事も育児も上手にコントロールしながら活躍するSさんの体験談をご紹介します。再就職に成功したコツや、時短勤務での働き方の工夫もうかがってきました。
もくじ
Sさん(30代・子供1人)
夫と4歳になるお子さんの3人暮らし。外資系証券会社にて国内外のM&Aアドバイザリー業務に従事した後一旦離職。
10年のブランクを経て、お子さんの幼稚園入園のタイミングでベンチャー企業に時短勤務として再就職。
結婚前は、まさに寝食も忘れて仕事一色の日々。オフィスから朝日を見ながらタクシーで帰宅するのが日常でした。自分のベッドで寝たい、あれが食べたい、遊びたいなどとと思う暇もないくらい、仕事に没頭していましたね。
1ヶ月のうち半分は海外出張ということもあり、それ以外も昼夜を問わないハードワーク。そんな生活を続けていたら体内時計が崩れて体調不良になり、退職しました。その後、しばらくして結婚。
体調を崩すことなければ、今もその仕事を続けていたと思います。やっぱり仕事は好きなんですよね。
そのため、出産後は何かしらの仕事に就きたいと漠然と思っていました。その一方で、子供が幼稚園に上がる年齢になるまでは、育児に集中したいとも考えていました。
育児に没頭し、気がつくとブランク期間は10年に。子供が幼稚園に入園するタイミングで、本格的に復職を考え出しました。
まわりにワーママの友人はいましたが、私のように「長く離職している状態で預け先を確保して就職活動する」という例はありませんでした。どのように預け先を見つけて就職活動すればいいか、自分で徹底的に調べることに。
10年ぶりの就職。就職活動を開始すると生活がガラリと変わるので、子供への精神的負担を最小限にすべく、転職活動をスムーズに進めるための計画を立てました。
共働きを前提とした生活環境を整えるために、まずは引っ越しを検討しました。その際、私の再就職を見越した上でどこに家を構えるのが良いかを決めました。
仕事と両立する際に最も気がかりな、子供が病気になった時を想定し、緊急対応をお願いできる義実家と親戚の家の近くがベストだと判断しました。
次に子供の預け先を検討。保活激戦区だったため、保育園は入れる保証がない為、最初から預かり保育の充実した幼稚園に絞ることに。また、幼稚園は就業中でなくても入園できるため、転職活動する際に好都合だと考えました。
朝7時半~18時まで延長保育を設けている幼稚園をリストアップし、通園可能な範囲で2、3園の目星を付けました。
>>関連記事:共働き家庭の幼稚園預かり保育とは?入園選考方法やプレ保育について
子供にとって急な環境の変化はストレスになります。まずは引越し後の周囲の環境に慣れさせることから始めました。
幼稚園に入園し、落ち着いた頃に延長保育の慣らしをスタート。3ヶ月という余裕を持った慣らし保育期間を設定し、少しずつ預け時間を延ばしていきました。
預け先が確保できているため、すぐに仕事復帰も可能でしたが、焦らずに子供の情緒安定を優先しました。
この期間中は日中の時間を自由に使えたので、転職活動を開始すると同時にTOIECの勉強をして再受験し、応募書類を強化しました。
子供が幼稚園に慣れて新しい環境に慣れはじめてきた頃を見計らい、転職活動を本格化させました。
理想とする勤務条件は、9時~16時で週4日勤務。時短勤務というのは大前提で、できる事なら毎週水曜日は子供との時間にあてたいと思っていました。
我ながら贅沢な条件なのは承知の上で就職活動を進めていったのですが、予想通りさまざまな障壁がありました。
まずネックになったのは勤務時間。大手の転職エージェントに相談し、16時に退勤できる企業を紹介してもらったものの、面接では思わぬ要望を受けました。
「オフィスへの出勤は9時~16時でOK。ただし、夜に自宅からリモートでフルタイム相当分作業して欲しい」「退勤時間は16時でOK。ただし、朝6時くらいに出社することは可能か?」などの、実質フルタイムを求められることが多かったのです。
結局「正社員=フルタイム」と規定する企業ばかりで、「早く帰る場合、フルタイム勤務の人にどう合わせることができるか」が求められることがわかり、絶望的でした。
時短転職はあきらめざるをえないかと、一時は弱気になりました。パートや派遣のほうがいいのかな?などと思うことも。しかし、やはり育児に軸足を置いた生活を送る前提で、正社員で裁量のある仕事に就きたいという気持ちを変えることはできませんでした。
時短転職について調べていると、時短転職を専門とするエージェントを発見。早速登録しキャリアアドバイザーに相談しました。
「時短正社員は無理なのか、契約社員や派遣のほうがいいのか」と弱気な気持ちを伝えると「これまでのご経験からすると、正社員をあきらめるのはもったいない。条件にあった企業を探しましょう。あきらめないでください!」と前向きな対応。背中を押してもらい、希望を妥協することなく転職活動を続行しました。
あきらめず転職活動を続けていった結果、M&A領域のベンチャーである現職に入社が決まりました。そして見事、当初の希望通りの勤務条件で採用してもらえることが決まりました。時短勤務・正社員・週4日勤務で採用してもらえるとは思っていなかったので、本当に嬉しかったです。
「勤務形態や評価のありかたは一人ひとり違っていい。」とは、採用された企業の担当者に言われた言葉です。あきらめないで探した結果、私自身に向きあってくださる企業に出会う事ができました。
企業が提示する働き方に自分を当てはめるのではなく、自分自身の条件を軸にマッチした企業を見つけたり、柔軟に条件を調整してもらったり、ということが不可能ではないことに気付きました。
時短勤務だからこそ、目標設定がとても大切だと感じています。自分にフィットした目標を設定するため、最初はかなり模索しました
時短勤務での働き方は、上司も私自身も経験がなかったため、採用されて1ヶ月くらいはお互い手探りでしたね。繁忙期前の入社でしたので、1ヶ月間は会社をじっくり理解する時間にあて、どのような動きをしたら会社に貢献できるかを探りました。
現職では評価体系も定型的ではありません。良い意味で決まってないからこそ、それぞれの目標があり一人ひとりをしっかり見てくれていると感じています。
できると思ってもらっていることを、期待値以上でやるために、仕事に対する姿勢は、時短勤務であってもフルタイム時と何ら変わりません。
就職して2ヶ月経った頃、1週間の海外出張へ出向きました。きっかけは、上司が「アポ取ったSさんが行かなきゃね」と冗談めいて提案してくれたことでした。
家族に相談したところ、義母が「いい機会だから断ったらダメよ!」と背中を押してくれ、夫と子供には義実家に1週間の里帰りをしてもらうことに。就職前に義実家の近くに引越していたので、出張準備がスムーズに進んで助かりました。
職場では「子持ちのワーママは出張なんて無理」と配慮されることが一般的だと思いますが、上司の柔軟な計らいのおかげで、家庭と裁量のバランスを保ちながら仕事に取り組めています。
子供がもう少し大きくなれば、もっと仕事に時間を割いてさらにアクティブに働きたいですね。一方で、120%フル稼働の勤務で体を崩した経験があるため、ワークとライフ、どちらにも振り切ることなくバランス良く勤務できるよう模索していきたいと思います。
いずれにせよ、「時短だから」とか「子供がいるから」など、環境のせいにすることなく、お客様に喜んでもらったり世の中に貢献したりできるような働き方を考えていきたいです。
欲張りと言われるかもしれませんが、これからも妥協することなく、育児・裁量のある仕事・仕事の成果を追及していきます。
育児を優先しつつ時短勤務でも大きな裁量を任せてもらえる仕事を見つけるために、Sさんはしっかり調査・計画したうえで、あきらめることなく行動し続けました。
Sさんはワーキングマザーとしてどのように働きたいか、明確にビジョンを持ち情報収集をしていました。
就職活動に必要な段取りやタイミングを念入りに計画し、履歴書のブラッシュアップのためにTOEICを再受験するなど行動を起こし、10年のブランクをクリアする努力も惜しみませんでした。
子供の精神的安定を最優先にしながら、余裕を持って就職活動に注力できたことで、あきらめず希望の条件の会社に出会うことができました。
希望する働き方やありたい姿を明確にし、それに応じた段取りを組むことが時短就職成功の鍵となるでしょう。
限られた時間の中で高いパフォーマンスを発揮するSさんは「時短だからできないことはない。時短だからできることもある」と言います。
フルタイム時代と同様、目の前の業務を作業的に「こなす」のではなく、長期的視点で向き合っているとか。毎回目標を設定し、それに向けての段取りを大切にしているそうです。また、時間が限られていることによって、以前より圧倒的に生産性高く業務に取り組めているそうですよ。
就職活動の過程でうまくいかず時短就職をあきらめかけた時期もありましたが、働き方の条件は譲れないと再確認。
企業の条件を自分に無理やりあてはめるのではなく、あきらめずに自身の追求する働き方と企業の「接点」を見つけにいくことが大切です。
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