「考えもしなかった、まさか自分が離婚することになるとは…。」シングルマザーのNさんは、離婚から1年経った今でもそう言います。
これまでフルタイム勤務の共働きで、夫婦で協力して家庭と仕事の両立をはかってきたものの、夫のDVをきっかけに離婚。現在は実家に戻り、小学校2年生の長女と年長さんの長男と両親の5人で暮らしています。
子供2人を育てていくため、 フルタイムの広報から時短勤務のカスタマーサポートにキャリアチェンジをしました。
今回は、離婚を機に働き方を変えて新しい環境で活躍するシングルマザーの体験談をご紹介します。
もくじ
もともと大学で学科の先輩だった夫。大学時代はほぼ接点はなかったものの、夫は友達も多く後輩からも慕われるタイプで、私にとっては憧れの先輩でした。
卒業後、学科の同窓会で再会。現代アートが好きという共通の趣味の話題で意気投合して、1年半の交際を経て授かり婚をして長女が誕生。
夫はとても優しくて家庭思いで、そのころは幸せでいっぱいでした。「子供に何か残してあげたい」と少し無理をして注文住宅を建てました。
夫の仕事は定時に上がれる部署だったため、毎日娘の保育園のお迎えも行ってくれて、保育園の先生やママ友からも「マメで優しいパパね」と言われていました。
それから間もなくして長男が誕生。
年々ちょっとしたことで怒りっぽくなる夫の態度に気になりながらも、「昨日はごめん」とすぐに切り替えてくれるところが、彼の良さだとそのころは思っていました。
ある日、私の首にあるアザを同僚に指摘されました。
「そのアザ、どうしたの?!」
「私が床拭き掃除できてなくてさ、夫に怒られちゃったんだよね」
「どういうこと…!?」
そこで同僚に問いただされ事情を説明したところ、「それは夫からDVを受けている状況だ」と指摘されました。
私は料理が下手で、その上掃除も行き届いていない。それが几帳面な夫の怒りに触れ、叩かれたり突き飛ばされることがありましたが、それは私が至らないせいなので仕方がないと思っていました。
それに、しばらくすると「本当にごめん、やり過ぎた」「大丈夫だった?」と夫は優しい声を掛けてくれるのです。私はそのたびに「夫に家庭のことを手伝ってもらっている。私も、家事も仕事も頑張らなくては」と思っていました。
しかし、夫からのDVは日に日にエスカレート。今思えば完全にDVでしたが、当時の私は麻痺していました。
ついに子供の前でも私に対して暴力をふるうようになっていきました。子供も何か察したのか、ちょうどそのころから、子供が保育園へ行きたがらなくなったのです。
娘の保育園への行き渋りが一週間続き、泣きじゃくる娘を無理やり保育園に連れていったところ、その姿を見ていた園長先生から声を掛けられました。
家庭で変わった事はないかと聞かれ、事情を話すと、「すぐに役所の相談室へ」とアドバイスをもらいました。
そのまま役所に相談に行ったところ、そこではっきりと「夫から受けているのはDVであること」「今すぐにでも母子共にシェルター施設へ入ること」を提案されました。
そこでようやく目が覚めました。
夫から暴力を受けながらも、それは家族への愛情によるものだと思い込んでいました。しかしそれは明らかに誤認識でした。
そのまま知り合いの弁護士に問い合わせ、離婚へ踏み切ることにしました。
私達親子は少し離れた実家に逃げ込み、そのまま住まいを移しました。
家のローンや荷物もそのままだったので、その手続きや荷物の引き取り等を弁護士に同席してもらいながら進め、離婚関連の手続きがすべて終わるまでに約1年かかりました。
体重は8kg減り寿命が縮まる思いでしたが、「守るべき子供のため」と思うと母は踏ん張れるものですね。
離婚に関するの弁護士との相談など手続きが長期化する中で、心身共に疲弊しきっていました。それでも子供2人の生活を守るために倒れるわけにはいかない、と自分を奮い立たせていました。
そんな私を精神的に支えたのは、仕事の存在でした。
出社すれば社内はいつもと変わらず稼働している。職場で仕事に追われ、社内や訪問先で「何も変わらない私」として過ごせることが、私の心の安定を保っていました。
長女は小学校を転校し、長男の預け先はとりあえず無認可保育園を確保しました。
子供の居場所は無事に整えることができたのですが、現職の広報では社外とのやり取りも多く、定時を過ぎる事が多々ありました。
実家暮らしをしているものの、親は高齢で身体も不自由な両親なので子供の面倒をずっと見てもらうわけにはいきません。
残業の多い現状の働き方を継続するのは困難と判断し、「仕事は続けたいが残業ができない」と上司に相談しました。
すると「広報は業務の特性上、残業対応も必須になる。ただ、社内のカスタマーサポート職なら時短勤務が可能なので、そちらへの異動はどうか。そのかわり、隔週で土曜日も出社となる。」と提示してくれました。
フルタイム残業ありから時短勤務への働き方を考慮してくれたことが嬉しくて、二つ返事で異動のお願いを受諾しました。
実のところ、退職を示唆されるかもしれない、と覚悟の上の相談でしたので、上司の提案は大変ありがたく涙がでました。
もし今退職すると、「ほぼワンオペ育児、弁護士相談・裁判と並行しての転職活動」となるため、時間的にも精神的にも、あまりにも負担が大き過ぎます。
これまで経験したことのない職種へのキャリアチェンジでしたし、時短勤務で給与が下がる、土曜出勤などデメリットはありましたが、今の私にとってはとてもありがたい提案でした。
実家へ住まいを移して丸1年、カスタマーサポートの部署に異動してもうすぐ1年。
かなりの精神的負担がありましたが、ようやく裁判が終わり、無事に離婚成立。ようやく地に足の付いた生活がスタートできているように感じています。
長女は転校先の小学校にも慣れ、長男は新年度から認可の保育園に転園できました。
隔週での土曜出勤の際は、長女にはお弁当を持たせて児童館へ行かせています。丸一日友達と遊べることが嬉しい様子。長男は土曜保育を利用。こちらもいつもと違う教室で異学年保育になる事を楽しんでいます。
私も新しい業務に慣れ、さらに新人研修にも携わるようになりました。
未経験職種へのキャリアチェンジでしたが、今までの広報職で培ったプレゼンやマニュアル作成などのスキルをいかして仕事ができるので、とてもやり甲斐を感じています。
もちろん育児に関する悩みやストレスはありますが、職場という家庭以外の自分の居場所があったおかげで、頭を切り替えられています。
会社のために自分ができることを考え、業務に反映し、成果をあげることで、私自身の自己肯定感が保たれているように思います。
「何のために働くのか」というテーマに対する答えは、人によってさまざまです。
仕事を選ぶ段階では、つい収入や条件等にとらわれがちですが、「自分が必要とされる喜び」や「自分の居場所」「達成感」など、本人にしか図りえないものを得ていることもあります。
今回ご紹介した事例のように、仕事そのものが「自分らしく生きる」ことをバックアップしてくれる場合もありますね。
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