育児休業給付金は転職したばかりでももらえる?空白期間のあり・なしにも注意!

                   

育児休業給付金は、これから育休中に入るパパ・ママにとってとてもありがたい制度。

入園する保育園が決まる前など、家庭保育が必要で働けない人の収入を一定額保障する制度として誕生しました。

しかし、育児休業給付金は子どものいるパパ・ママであれば誰でももらえるわけではなく、受給には一定の条件を満たしておく必要があります。

特に育休前に転職していた場合、育児休業給付金の支給元である雇用保険の加入歴次第では受給できない場合があるので注意しましょう。

本記事では、転職したばかりでも育児休業給付金をもらえるパターンについて解説します。

育児休業給付金とは?

育児休業給付金とは、育児休業中に雇用保険から支給されるお金です。

子育てに伴う休業中の収入ダウンを支援する制度であり、退職せずキャリアを続けたり復職しやすさを支えたりする制度として制定されました。

その歴史は1994年に遡り、制定当初から給付額や支給条件が少しずつ見直され、今では母親のみならず父親や養父母でも取得できるようになっています。

育児休業給付金の受給対象者となる条件

育児休業給付金の受給対象者となる条件は、下記の通りです。

  1. 1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)
  2. 育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12ヶ月以上あること
  3. 1支給単位期間中(支給単位期間とは、育児休業を開始した日から起算した1ヶ月ごとの期間(その1ヶ月の間に育児休業終了日を含む場合はその育児休業終了日までの期間)の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること

つまり、子どもが1歳の誕生日を迎える前までに育休取得が確定していることが第一条件となります。

そのうえで、月10日以下(または月80時間以下)しか働いていないことが条件に加わっています。

育休中は基本的に完全休業である人が多いですが、繁忙期に伴い職場のヘルプを兼ねて出勤する場合や単発アルバイトをして収入を得るときは注意が必要です。

正社員であり、かつ育休前の2年間に離職・休職を挟んでいないのであれば、まず問題なく条件をクリアできると考えてよいでしょう。

ただし、パート・アルバイト・契約社員など有期雇用者の場合、上記に別の条件が追加されます。

  1. 子が1歳6ヶ月になるまでに、労働契約期間が満了することが明らかでないこと

つまり、子どもが1歳6ヶ月を迎えるまでに雇用期間が切れてしまい、契約終了となる人は育児休業給付金を申請することができません。

育児休業給付金はあくまでも企業に在籍しながら育休を取得する人の収入減を補填する制度であり、離職した人は対象から外れてしまいます。

育児休業給付金を受け取っている間に契約満了することが明らかな人は申請できない仕組みになっているので、注意しましょう。

育児休業給付金の支給時期・支給額

育児休業給付金の支給額は、育児休業を開始してからの日数により異なります。

  • 育児休業開始から180日まで:休業開始前の賃金の67%
  • 育児休業開始から181日以降:休業開始前の賃金の50%

ただし、育児休業給付金には上限額と下限額があります。上限額は1ヶ月あたり28万6,023円、下限額は1ヶ月あたり4万6,431円です。

直近の給与明細等を確認して67%(または50%)分を計算すれば、およその受給額がわかるのでチェックしてみましょう。

厳密には、育児休業開始とともに職場がハローワークに提出する算定用書類(雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書)に基づいて計算されるので要注意。

通勤手当や住宅手当など金額が固定されている額は算定基礎に含まれますが、インセンティブ給や賞与など変動制の高い項目は算定基礎に含まれないので、細かくは職場もしくはハローワークで計算してもらうのが一番です。

育児休業給付金は転職してももらえる!

転職直後の育児休業であっても、前述した条件を全て満たしていれば育児休業給付金をもらえます。

同一の就業先でなくとも転職前後で雇用保険に加入していれば、加入期間を合算して受給対象者としてもらうことが可能です。

前職の離職票と現職の算定用書類(雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書)を併せれば、受給額も正確に計算されるので安心してよいでしょう。

そのため、転職すること自体が育児休業給付金の受給可否に影響することはないとわかりmす。

【要注意】転職して育児休業給付金がもらえないケース

転職しても問題なく受給条件をクリアしていれば育児休業給付金をもらえますが、「そもそも受給条件がわかりにくい」「思わぬ落とし穴があって育児休業給付金をもらえなかった」という人がいるのも事実です。

下記では、転職して育児休業給付金をもらえなくなるケースについて解説します。

子どもが1歳半になる前に労働契約の終了が見込まれる場合

前述の通り、子どもが1歳半になる前に労働契約の終了が見込まれる場合は育児休業給付金を受給できません。

正社員など期間を定めない雇用形態(無期雇用)であれば問題ありませんが、パート・アルバイト・契約社員などの有期雇用であれば要注意。

雇用契約書に労働契約の更新をしない旨が明記されていたり、育児休業給付金の申請時点で締結している雇用契約書の末日が1歳半より前だったりすると、更新可能性の有無を問わず受給できなくなってしまいます。

そのため、有期雇用者が育児休業給付金を受給したい場合、子どもが1歳半になって以降の日付まで雇用契約書を締結してもらう必要があります。

また、「正社員求人だが試用期間中は契約社員扱い」という会社に転職する場合も注意が必要です。

試用期間中(契約社員として働いている途中)に育休を取る場合、育児休業給付金の対象とならない可能性があります。

入社1年未満では育児休業を取得できない企業に転職した場合

入社1年未満では育児休業を取得できない企業もあるので注意しましょう。

原則として「育児休業は勤続年数を問わず希望者全員に与えなくてはいけない」と法律で定められていますが、別途労使協定を締結している企業であれば縛りがなくなります。

つまり、「入社1年未満の労働者を育児休業の対象から除外する労使協定」を締結している企業に転職した場合、そもそも育児休業を取ることができない、ということです。

育児休業給付金は育児休業の取得に伴って賃金が減った人を助ける制度なので、そもそも育児休業を取ることができなければ、当然育児休業給付金ももらえなくなるのです。

育児休業が取れない場合、保育園が決まるまでの間は家族・祖父母・ベビーシッター等をフル活用した育児が必要です。

とはいえベビーシッター代は高額になりやすく、夫や祖父母も24時間365日体制で子育てできるとは限らないため、あまり現実的ではないでしょう。

結果、せっかく正社員転職しても早期離職して専業主婦になる等、思わぬ落とし穴が隠れているので注意が必要です。

育休取得予定がある人は、入社前に労使協定の有無を確認するなどして対策しておきましょう。

失業中に失業手当を受給している場合

転職前の失業中に失業手当を受給している場合、転職してすぐ育児休業を取得しても育児休業給付金を受け取ることはできません。

本来であれば転職前の企業における雇用保険加入歴も合算されますが、失業手当を受け取っていると加入歴がリセットされてしまい、転職直後に育児休業給付金を受給できなくなるのです。

つまり、転職先で1年以上大きな欠勤なく勤続し続けない限り、育児休業給付金の対象から外れてしまうのです。

とはいえ育児休業給付金は子どもが生後半年を迎えるまでに申請する必要があり、勤続年数が長くなるのを待っていては期限切れになってしまう可能性が高いです。

転職直後に育児休業給付金がほしい人や、失業手当を受け取っていた人は注意しましょう。

転職直後でも育児休業給付金をもらう方法

転職直後でも育児休業給付金をもらいたい人は、下記に注意しましょう。

育児休業給付金は元の賃金の50~67%を受け取れる制度なので、万が一受給できず収入がゼロになるのは大きな痛手です。

事前にコツを抑えて転職すれば、問題なく受給できる可能性が高まります。

正社員として転職する

パート・アルバイト・契約社員等の有期雇用より、正社員など無期雇用の方が育児休業給付金取得の条件が緩和されているのは事実です。

正社員であれば雇用期間に定めがないため、雇用期間の終わりを気にすることなく育児休業給付金の申請ができます。

反対に雇用期間に定めがある場合、育児休業給付金を受け取っている期間中は雇用契約が途切れないようにする必要があるので要注意。

会社によっては「契約社員は必ず半年範囲で更新を見直すので1年半以上の雇用契約書は発行できない」と断られてしまう可能性があり、その段階で育児休業給付金受給の道が途絶えてしまいます。

育児休業から復帰後のキャリアアップの面でも、正社員転職することには大きな価値があります。

どうしてもワークライフバランスを重視したいときは時短正社員として転職するなど工夫し、育児休業給付金受給の問題と仕事・家庭のバランス問題を同時に解決していきましょう。

ブランク(空白期間)を空けずに転職する

前職を退職してから次の企業に転職するまで、なるべくブランク(空白期間)を空けずに転職するのが理想です。

転職直後でも育児休業給付金を受給できますが、「育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12ヶ月以上あること」という条件を満たす必要があるので要注意。

つまり、ブランクが2年以上ある人は、その段階で転職直後に育児休業給付金を受け取れなくなります。

また、転職してから育児休業給付金を申請するまでの期間にもよりますが、ブランクが2年未満であっても直近の雇用保険加入歴を満たせない可能性があるので注意しましょう。

なるべくブランクなく転職し、「雇用保険に加入してなかった」という時期を短縮するのが秘訣です。

入社1年未満でも育児休業が取れる企業に転職する

労使協定の有無次第では、入社1年未満で育児休業を取れない場合があります。

育児休業給付金を受け取るには、まず育児休業を取得することが大前提。

そもそも育児休業を取得できないと、育児休業給付金の受給有無どころか退職しなくてはならないリスクが出てきます。

面接の段階や内定承諾前の段階で労使協定の有無について質問し、内容をチェックさせてもらうとよいでしょう。

どうしても直接聞きづらいときは転職活動開始段階でエージェントを使い、事前にリサーチしてもらったうえで条件が合致する企業だけに応募するのもおすすめです。

転職活動のロスを防ぐ意味でも、双方のミスマッチをなくす意味でもメリットがあるので、転職エージェントを賢く活用していきましょう。

転職後の産休・育休で育休給付金以外にもらえるお金はある?

最後に、転職後の産休・育休で育児休業給付金以外にもらえるお金を解説します。

健康保険や雇用保険をフル活用すれば、意外にももらえるお金は多いもの。

金銭的な不安をなくして出産・育児に専念するためにも、復職前の準備をじっくり進めるためにも、下記の各種制度について理解しておきましょう。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、出産費用を補填するための制度です。

加入している健康保険協会から支払われる金額であり、出産にかかる費用を支援するために制定されました。

出産費用は病院や週数、出産方法により異なりますが、安くても数十万円するのが現状です。

妊産婦の金銭的な負担を軽減し、出産・育児に必要な最低限の金額を補助する制度なので活用していきまあしょう。

出産育児一時金の受給対象者となる条件

出産育児一時金の受給対象者となる条件は、下記の通りです。

  1. 健康保険に加入していること
  2. 妊娠4ヵ月(85日)以上の出産であること

日本では国民皆保険制度が導入されているため、「1.健康保険に加入していること」という条件は全員満たしています。

生産(早産)・死産(流産)・人工妊娠中絶であっても支給を受けることができる他、多胎出産(双子以上の出産)であれば人数分の金額が支給されるのもポイントです。

出産育児一時金の支給時期・支給額

出産育児一時金の支給額は子ども1人につき50万円であり、申請から1~2週間程度で支給されるのが一般的です。

最小限のタイムラグで速やかに支給してくれるので、金銭的な不安から解消されやすいのがメリット。

受取人を出産先の病院にして窓口支払額を軽減することも、受取人を自身(または家族)にして残金を育児費用に充当することも可能です。

出産手当金

出産手当金とは、出産を控えた妊婦および産後間もない妊産婦の収入減を補う目的で制定された手当金制度です。

「産休中(産前産後休暇中)」の女性を対象とした制度であり、男性の受給はできません。

出産手当金の受給対象者となる条件

出産手当金の受給対象者となる条件は、下記の通りです。

  1. 健康保険に加入していること
  2. 出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目の範囲で仕事を休み、収入が減少していること

出産手当金は「産前分」と「産後分」とに分かれているのがポイントです。

「産前分」は出産日(または出産予定日)より原則42日分の収入減を補助するものであり、出産予定日が遅れればその分支給日数も伸びます。

「産後分」は出産翌日から56日分の収入減を補助するものであり、出産予定日からの前後日数は関係なく全員一律で支払われます。

とはいえ、産休を何日取得するかは人により異なります。

産後56日は全員が休まなくてはいけませんが、産前は出産予定日ギリギリまで働く人もいるでしょう。

働いていて収入が減っていない日数分は出産手当金を受け取ることができないので、注意が必要です。

出産手当金の支給時期・支給額

出産手当金は、申請から1~2週間程度で着金します。

ただし、産前産後分をまとめて申請する人もいれば、産前分と産後分を分けて申請する人もいるので具体的な申請時期は人によりバラバラなのが現状です。

支給額は、会社が健康保険協会に提出している算定基礎届により確定する「標準報酬月額」のうち3分の2相当額です。

「およそこれくらいの給与を支払う予定」として提出された金額のうち3分の2程度なので、実際に受け取っている賃金の3分の2ではない点に注意しましょう。

気になる場合は会社に問い合わせて自分の標準報酬月額を教えてもらえば、より正確な計算ができます。

傷病手当金

傷病手当金とは、病気・怪我等の理由により就業できず、収入が減ってしまった人を支援するための手当金制度です。

出産以外のシーンでも使える制度ですが、妊産婦の場合は主に重症妊娠悪阻(つわり)や切迫早産・切迫流産・妊娠高血圧症候群等による管理入院が生じた際に活用します。

傷病手当金の受給対象者となる条件

傷病手当金の受給対象者となる条件は、下記の通りです。

  1. 健康保険に加入していること
  2. 業務外の病気やケガで療養中であること
  3. 療養のための労務不能であること
  4. 4日以上仕事を休んでいること
  5. 休業中に給与の支払いがないこと

つまり、医師によるドクターストップがかかっていることを示す書類(診断書等)があり、4日以上仕事を休んで収入が減っている健康保険被保険者であれば誰でも対象となります。

労災以外の全ての傷病に適用される制度であり、理由や妊娠・出産でも問題ありません。

産前手当金が発生する前の長期入院や自宅療養が生じると、その期間中の収入が途絶えて生活に大きな支障が出てしまいます。

どうしても仕事を休まなくてはいけないときは無理をせず、傷病手当金の活用を検討しましょう。

傷病手当金の支給時期・支給額

傷病手当金は、申請から1~2週間程度で着金します。

ただし、医師が労務不能と認めた期間より申請できる期間も左右されるので注意しましょう。

ある程度体調が落ち着いてからまとめて申請する人もいれば、こまめに申請して当面の生活費を補填する人までさまざまです。

支給額は、会社が健康保険協会に提出している算定基礎届により確定する「標準報酬月額」のうち3分の2相当額です。

出産手当金の金額と同じなので、傷病手当金だからといって大幅に支給額が減ってしまうこともありません。

まとめ

育児休業給付金は、育休中の収入減を補填するありがたい制度です。

受給できるか次第で生活の安心感は大きく変わるので、転職や育休を控えている人は事前に条件を確認しておきましょう。

また、企業ごとに締結している労使協定の内容次第では、転職直後に育休が取れないこともあるので注意が必要です。

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