ワーママのなかには、管理職として役職がつき、マネジメント側にシフトしている人も少なくありません。
いわゆる「バリキャリ」というイメージがある一方で、「役職がついていることが負担」「役職がない頃の方が家庭と両立しやすかった」という人がいるのも事実です。
今回は、ワーママが役職者になるメリット・デメリットや理想的な働き方について解説します。
女性管理職を巡る直近の動向にも触れるので、参考にしてみましょう。
もくじ
厚生労働省の「雇用均等基本調査」では、近年女性管理職が増えていることがわかっています。
2022年度の調査では管理職に占める女性の割合は12.7%に到達し、2021年度の調査から0.4ポイント増加しました。
また、課長相当職以上の女性管理職がいる企業の割合は約5割、係長相当職以上の女性管理職がいる企業の割合は60.5%と約6割に到達しているため、男女共同参画社会が進んでいる様子も伝わります。
その他、コース別管理職を導入して女性管理職でも無理なく仕事と家庭を両立できるよう配慮する企業も増えています。
今後もさらに女性管理職の比率は高まるだろうと予想されており、役職つきワーママが増えるかもしれません。
(※)参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「管理職に占める女性の割合が12.7%で前回調査からわずかに上昇」
ここでは、女性管理職に関する直近の現状を解説します。
株式会社mogがまとめた「女性管理職白書2021」を参考に、管理職に就いている女性の本音や取り巻く環境を理解しておきましょう。
(※)参考:株式会社mog「女性管理職100人に管理職に関する意識調査を実施 女性管理職白書2021」
引用:株式会社mog「女性管理職100人に管理職に関する意識調査を実施 女性管理職白書2021」
上図では、現役の女性管理職のうち、もともとの管理職志向について示されています。
意外にも、「プレイヤー(現場担当者)として働きたかった」「管理職の魅力を感じていなかった」など管理職の意向が低かった人が全体の過半数を占めていることが分かります。
つまり、管理職になりたくてなった人は半数以下であると言えるのです。
「管理職」と聞くと「給料が高そう」「バリキャリ女性でかっこいい」などポジティブなイメージを持つことが予想されますが、実際に自分が管理職になりたいと考えるかは別のようです。
実際に管理職として働いている上司たちの姿を見て希望が持てなかったり、ライフステージの変化に伴って管理職として働くことの負担に不安を感じたりすることも多いのでしょう。
とはいえ、管理職になるつもりがなかったのに実際に管理職になっている女性が多いことから、適性がある人の多さも伝わります。
引用:株式会社mog「女性管理職100人に管理職に関する意識調査を実施 女性管理職白書2021」
女性管理職のうち、半数以上が上司など周囲の推薦を受けて管理職になっていることもわかりました。
自ら管理職になりたいと思って管理職登用を目指した人の割合は3割程度に留まり、明確なキャリアアップの意思を持っていた人が少ない現状がわかります。
この背景には、ダイバーシティ推進や男女共同基本社会の実現など、会社側の狙いがあることが影響しています。
「女性管理職の数・割合を増やしたい」と考える企業側が優秀な女性社員に積極的に声をかけ、管理職として登用している事情があるのです。
引用:株式会社識学「7割超が管理職になりたくないと回答。“女性管理職を増やす動き”には賛成多数も、実際になりたい・向いている女性はごく少数に」
同様に、「管理職になりたくない」と考えている女性が多いこともわかっています。
株式会社識学の調査では実に7割以上の女性が「管理職になりたいとは思わない」と考えており、積極的に管理職を目指す割合は1割以下に留まりました。
管理職になりたくない理由として、下記が挙げられています。
女性の場合、男性と比較してワークライフバランス由来の理由が多くなっています。
子育てや介護などを理由に管理職を断る女性も多く、無理せず両立させる施策が課題となりそうです。
女性管理職が増えること自体は歓迎されつつあるものの、実際に自分が働くとなると下記のような課題に不安を抱く人が多いです。
例えば、管理職になって仕事への責任が増すと、時間外での緊急対応やトラブル対策が求められることが多いです。
しかし実際に30~40代で働く女性は子育てに忙しく、50代以上になると介護問題がのしかかってくることも。
20代女性も結婚・出産を控えて管理職意向が低くなるケースが多く、家庭との両立がひとつの鍵となっています。
また、女性管理職のロールモデルが身近にいないためキャリア形成の仕方が不透明になり、自信が持てなくなることもあるでしょう。
女性管理職ならではのやりづらさをイメージできる場合、どうしても「管理職になりたくない」という気持ちが先行してしまいます。
子育て真っ只中にあるワーママが管理職になる場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
まずはワーママが管理職になるメリットから解説します。
管理職になると役職手当がつく企業が多く、毎月支給される給与額が上がります。
場合によってはチームの成績次第でインセンティブがつくなど、賞与や報酬面でのアップも期待できるかもしれません。
子ども用品や学費に何かとお金がかかる家庭にとって、管理職となってキャリアアップすることは大きなメリットとなります。
また、マネジメント側に立つとさまざまな実績が自分の実績と紐づくため、社内で評価されやすくなります。
更なる昇進・昇給を目指せるようになり、やりがいも待遇も向上していくのがメリット。
やがて部署をひとつ丸ごと任されるようになったり、大きなプロジェクトのリーダーとして機能したり、自分の経験も増えていくでしょう。
事業部時代の成績が認められて女性役員として就任する人もいるので、大きな可能性があるとわかります。
管理職になって仕事の責任が増え、権限の及ぶ範囲もできる仕事も大きくなっていけば、仕事にやりがいを感じられます。
「仕事をしていて楽しい」「一般社員の時代にはできなかったことができる」という実感を得られれば、会社に貢献すること自体も楽しくなっていくもの。
なんとなく働くだけの日々から脱却でき、心身ともに健康的になるでしょう。
仕事がつまらないと感じている人は、思い切って役職者を目指すのもひとつの手段です。
マネジメント経験は社内だけでなく社外からも評価されるため、転職市場における注目度も上がります。
より好待遇で転職できるようになり、キャリアアップ転職したり本当にやりたかった職種にチャレンジしたり、将来の選択肢が増えることもポイント。
経験を活かして転職すれば、やりたいことを諦めないキャリアが叶います。
今から10年20年後のことも考えてキャリア形成したいときは、役職者になっておくのがひとつの選択肢になりそうです。
ワーママが役職者になるメリットは大きい一方、デメリットもあります。
一度役職者になってしまうと下がりづらいという現状もあるため、デメリットを理解してかから役職者になるのが理想です。
役職者は業務の責任が大きいだけでなく、業務量も範囲も大きくなることが多いです。
自分の自由になる時間が多いときは問題ありませんが、ワーママの場合は保育園への送迎や学校イベントへの参加など、時間的な制約があるので注意しましょう。
「〇時までにこのトラブルを解決しないとお迎えに間に合わない」
「今日は夫の都合がつかないのですべてひとりでやる必要がある」
などの事情が生じて、シビアな時間管理が求められます。
その分家庭と両立するハードルが上がってしまい、物理的に管理職の継続が難しくなることもあります。
役職者になって業務の負荷が増すことにより、精神的な余裕がなくなる可能性があります。
責任が大きくなるのは男性管理職やワーママ以外の女性管理職でも同様ですが、子どもの看病や友達同士のトラブル対応などに追われながら仕事でも一定のパフォーマンスを発揮しなくてはならず、大きなプレッシャーがかかることも。
女性管理職として注目されるケースもあるので、小さなミスが命取りのように感じるかもしれません。
自分で自分を追い詰めるような働き方になっても止められず、心身を壊してしまうリスクがあります。
あまりにも精神的な余裕がなくなると、メンタルを崩すケースがあるため要注意。
数日有給休暇を取って回復に専念するだけで持ち直せればよいですが、メンタルに影響している場合は数日で回復できるとも限りません。
最悪の場合、子どもへの対応や家庭の維持に影響したり、休職・退職などキャリアの断念に追い込まれたりすることもあります。
せっかくキャリアアップのために選択した役職者の道が、却ってキャリアダウンになってしまうようであれば考え物です。
ここでは、ワーママが上手に役職者として働くコツを解説します。
役職者でありつつ仕事も家庭も充実しているワーママは多いので、下記を参考にしてみましょう。
家族や親戚に対して自分のキャリアプランを話し、役職者になるメリットを伝えておくなどして、協力を得るのが大切です。
また、役職者になることのデメリットや大変な部分なども正直に話し、「協力してほしい」と素直にお願いしてしまうのもひとつの手段。
曜日ごとに夫が勤務調整したり、祖父母の手を借りて保育園の送迎やイベント参加を乗り切ったりできれば、頼もしい存在となるでしょう。
反対に、自分ひとりで仕事も家庭も完璧にしようと考えた場合、どこかで破綻してしまう可能性が高いです。
使えるものは何でも使って家庭との両立を目指し、工夫できる点を常に探し続けることも大切です。
例えば下記のような対策が考えられるので、課題に合わせて活用していきましょう。
特に毎日の家事を時短できれば、仕事や子どもと過ごす時間を確保しやすくなります。
自分でなくてもできることは積極的に外注するなど工夫し、とにかく時間を増やすことを意識してみましょう。
事前に「できること」と「できないこと」を線引きを明確にしておくことも大切です。
家族で協力しながら家庭を築いていくのと同じく、仕事もチームメンバーで協力しながら成功させていくのがポイント。
「この日は絶対に残業できない」「この仕事はどうしても他のひとの力を借りたい」など、正直に話せる環境にしておけば自分ひとりに負担が集中することもありません。
とはいえ、我儘ばかりを通すことも難しいので、どこからどこまで自分が責任を持つか線引きを明確にしておくことも重要です。
社内に頼れる味方を増やしておけば、いざというときの対応も安心です。
同じ階層(役職)にいる他部署のメンバー、同じ部署の上司や部下、同期、信頼できる先輩社員など、味方は多いに越したことはありません。
業務を肩代わりしあうなど「お互い様」精神で働ける他、小さな愚痴を言い合うなど精神的なガス抜きになることも多いです。
同じくワーママとして役職についている人がいれば積極的に情報交換するなど、工夫してみましょう。
最後に、どうしても役職を外れたいワーママの対処法を解説します。
「役職に就くことより家庭を整えることの方が大切!」と感じたときは、下記の対策を参考にしてみましょう。
正直に自分の負担度合いについて相談し、降格させてもらうのがひとつの手段です。
役職につきたくないという人を無理に役職者にすることもできないため、会社側が飲んでくれる可能性は高いでしょう。
しかし、当然ながら役職者の手当が減ること、自ら降格を願い出たことでその後の評価にも影響する恐れがあることは承知しておかなくてはなりません。
場合によっては部署ごと変わる人事異動になるケースもあるので、慎重な判断が求められます。
一般社員になれる企業に転職し、自分の立ち位置を見直す方法があります。
マネジメント経験があると伝えればマネジメント職をおすすめされる可能性がありますが、入社時であれば「役職に就くことは考えていません」と正直に伝えやすいのがメリット。
一度役職についてから降りるより、お互いの負担も軽減できます。
「役職者=ワーママは両立できない」とも限りません。
実際に役職に就きながら仕事も家庭も充実させているワーママは多いので、企業ごとに異なる働きやすさが影響している可能性があります。
テレワークできる会社、フルフレックスで働ける会社、役職者のサポート担当がいて仕事を分担できるマネジメントをしている会社…など、管理職としての働きやすさを重視してみるのもおすすめです。
役職者でも両立しやすい会社に転職することも選択肢に加え、自分のキャリアプランを練り直してみましょう。
ワーママが役職者になるメリットは多いですが、その分「家庭と両立できない」「時間的な制約が多くて物理的に続けられない」などの課題も出てきます。
また、自分にキャリアアップの意向がなくても、会社側のすすめで役職者になるワーママも多いので注意しましょう。
リアルミーキャリアでは、ワーママの転職をサポートしています。
一般社員として転職できる企業はもちろん、役職者でも無理なく両立できる企業探しもサポートしているので、お気軽にご相談ください。