さまざまな事情により、育休中の退職や転職を考えるママは珍しくありません。元の職場に復帰しないで退職や転職をした場合に、「育児休業給付金」をもらえるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、育休中に退職・転職した場合に育児休業給付金がもらえるのか、返還する必要はあるのかといった疑問にお答えします。退職日による育児休業給付金の支給額の違いについても解説します。
もくじ
「育児休業給付金」は、雇用保険に加入している人が、育児休業中に雇用保険からもらえる給付金のことです。
育児休業中のママにとって、休業期間中に支給されない給与のかわりともいえる育児休業給付金。これは雇用保険に加入している労働者が、育児休業中も一定額の給付を受けられるように整えられている制度です。ママだけでなく育児休業を取得したパパも対象になります。
詳細な支給条件は
育児休業給付金は、育児休業が終了する日(子が1歳の誕生日の前々日)までもらえます。ただし1歳前に職場復帰した場合は、復帰日の前日までとなります。
保育園に申し込んだけれど落ちてしまった場合は、一定の要件を満たせば1歳6ヶ月~最大2歳まで育児休業が延長できます。その場合は育児休業給付金を2歳までもらうことができますよ。
育児休業給付金の給付額は、育児休業に入ってからの期間によって異なります。給付額の計算式だけを見ると手取り額の2/3(もしくは半分)という印象が強いですが、実際は所得税や社会保険料など税金が非課税となるため、最初の6ヶ月間は手取り額の約8割ほどになります。
育休中に退職や転職した場合は、給付金はもらえるのか気になるところですよね。退職するタイミングやケースごとに解説します。
結論からお伝えすると、育児休業給付金はもらえません。育児休業給付金は労働者と会社が納める雇用保険料と国庫負担が財源です。休業しても復帰して働き続けるための制度「雇用継続給付」のひとつなので、もともと退職を予定している方に支給されるものではありません。退職予定の方が故意に受給した場合は、返金を求められることもあります。
つまり、「復職するつもりがないことを隠して産休・育休を取得し、育児休業給付金をもらう」というのはルール違反となります。ワーママとして働けそうにない会社に在籍している方や、産後は専業主婦になりたいという方は注意しましょう。
もともと復帰するつもりで育児休業に入ったものの、家庭の事情やさまざまな事情で仕事に復帰しない選択をとるご家庭もあることでしょう。育児休業に入る前は復帰するつもりでいた前提があるので、この場合は育休終了と同時に退職しても給付金はもらえます。
なお、「育休終了と同時に退職・転職」であるため育休給付金は満額受給できます。とはいえ復職を前提として人事計画を立てていた職場に迷惑がかかることもあるため、復職直前での退職交渉は嫌がられてしまうことも。法律上問題がないことと職場の人が抱く心情とは別になるため、退職交渉の方法やタイミングには慎重になる必要があります。
上記のケースと同様、育児休業に入る前は復帰するつもりでいた前提があれば、育休期間中に退職・転職した場合も、在職期間中は給付金をもらうことができます。育休延長期間中であっても同じです。
ただし、退職日によって受給できる育休給付金の額が変動するので注意しましょう。原則として退職日が属する支給単位期間の前の分までしか受給できません。自分の支給単位期間に合わせて退職日を決められれば、損のない退職にできます。
育休後に復帰するつもりだったけれど、当初の予定と結果的に変わって退職となった場合、すでに受給した育児休業給付金を返還する必要はありません。あくまでも、育児休業に入る時点で、初めから退職する予定があったかどうか、といった点がポイントになります。
退職日によって、育児休業給付金の支給申請できる期間が異なります。退職日によって、まる1ヶ月分育児休業給付金の支給額に差が出ることを覚えておきましょう。
育児休業給付金の支給単位期間は1ヶ月単位で、退職日の支給単位期間の直前の支給単位期間までが支給対象となります。ただし、離職日が支給単位期間の末日の場合は、離職日を含む支給単位期間まで支給されます。
例:5月10日に出産した場合
産後56日目までが産後休業で、産後57日目にあたる7月6日が育児休業開始日。
育児休業給付金の支給単位期間は「7月6日~8月5日」「8月6日~9月5日」ですが、もし「9月4日」に退職する場合は「8月6日~9月4日」分までもらえるわけではありません。
この場合は、直前の支給単位期間「7月6日~8月5日」が最後の支給単位期間となりますので、もらえる給付金は1ヶ月分となります。
「9月5日」に退職する場合は「7月6日~8月5日」「8月6日~9月5日」 の2ヶ月分の給付金をもらうことができます。
ここでは、育休中に退職・転職するポイントを解説します。育休中の退職・転職は前職への後ろめたさを感じてなかなか決断しにくいものですが、心を決めたら早めに転職活動を始め、無職期間を短くしながら職場を切り替えていくことが大切です。
育休中に退職・転職する場合、まずは子どもの預け先を確保するところから始めましょう。保育園など安定して子どもを預かってくれる場所が見つかっていないまま転職活動を始めても、「うちは子連れ出勤できない」「子どもがいる状態でどうやって勤務するの?」と思われてしまい、そもそも選考に通りません。選考に通った段階で預け先が見つかっていないと、結局内定を辞退するしかなくなって双方にとって得がなくなります。
急ぎで転職したい場合は、認可保育園だけでなく認可外保育園も視野に入れて検討しましょう。その後認可保育園に空きが出れば転園することもできるので、まずは預け先の確保が急務です。
履歴書・職務経歴書は転職活動を始める前段階から準備できます。自己PR欄や希望職種欄は応募先ごとに変更する必要がありますが、ベースとなる基本フォーマットは先に作っておいてください。いざ転職活動を始めるとなったときに選考書類の提出を早められるので、転職活動のスピード化につながります。
また、履歴書・職務経歴書づくりに躓いたときは転職エージェントに相談するのもおすすめです。履歴書・職務経歴書の作成代行サービスを提供している転職エージェントであれば、自分の経歴を伝えるだけで書類として整えてくれるのがメリット。その他、持参した履歴書・職務経歴書を添削してくれるなどサポートも手厚く、事前準備を固められます。
転職エージェントへの登録は、育休中でも早めに済ませて問題ありません。育休中だからこその転職活動の進め方についてアドバイスしてもらえる他、最も損をしない育児休業給付金のもらい方や退職のタイミング、理想的な転職先の探し方など、総合的にサポートしてもらえます。育休中転職をする場合、「求職中」でも保育園を利用できる日数との戦いになるため短期決戦をする必要があり、事前に転職のコツやポイントを聞いて戦略的に進めていくことが欠かせません。
できる限り、ワーママ向けの転職エージェントや育休中転職の実績がある転職エージェントを頼るのが近道です。また、時短正社員転職やワークライフバランス重視の転職に強くないケースもあるので、自分の属性に合ったサービスを選びましょう。
現職と退職交渉を始めるのは、転職先が決まってからにするのがおすすめです。育休中転職は対策次第で十分に可能とはいえ、最低限の条件だけで転職できる独身時代に比べて困難になりやすいのは事実です。希望するタイミングで100%理想的な転職先が見つかるとも限らないため、先に退職日が決まってしまうのはリスクといえるでしょう。
最悪の場合、「転職先が見つからないまま今の会社を辞めてしまい、求職期間中に新しい内定ももらえなかったのでそのまま保育園を辞めざるを得なくなった」「結果、専業主婦になってしまい、さらに保育園に入れづらく、かつ再就職も困難になった」ということになりかねません。転職先を確保してから辞めるなど、自分の居場所を確保していくことが大切です。
育休中の退職・転職に後ろめたさを感じてしまう人は多いですが、実は復職してからの転職より業務引継ぎはスムーズです。一度育休から復職してしまうと当然ながら業務を割り振られるため、自分の担当領域が発生します。そこから短期間で退職・転職となると、職場側はまた新たな人事計画を作成して引継ぎ担当者を作らなくてはなりません。一方、育休中の退職・転職であれば比較的人事計画が作りやすく、業務引継ぎもほぼ発生しないため実務がスムーズに回るというメリットもあります。
もし最終的に退職・転職する意思が強いのであれば、育休終了のタイミングなどキリのいいところで相談して問題ありません。職場の都合にも最大限配慮する姿勢を見せれば、想像以上にすんなり受け入れてもらえる可能性も高まります。
次に、育休明けの勤務におすすめの会社を紹介します。以下に該当する会社であれば、乳幼児を抱えるワーママでも比較的働きやすくなるので検討してみましょう。
時短正社員として勤務できる会社であれば、正社員のポジションを失うことなく労働時間を短縮できます。保育園へのお迎えや夕方以降の家事・育児の時間に余裕を持つことができる他、ママ自身の体力温存にもつながるのでワークライフバランス重視の方におすすめ。子どもがある程度大きくなってからフルタイムに戻す選択肢も確保できるので、将来的なキャリアを潰してしまうこともありません。
とはいえ、転職直後から時短勤務ができる会社は少ないのも事実です。時短正社員特化型の転職エージェントを使うなど工夫し、そもそも「転職直後から時短勤務ができる会社」と出会える確率を増やしていきましょう。時短勤務にするときの交渉ポイントを指導してもらえるなど、転職のコツをアドバイスしてもらえるのもメリットです。
土日祝日休み、夜勤・出張がない、家から勤務先が遠くない、など理想的な働き方ができる会社を優先的に選定しましょう。長く勤める会社だからこそ、無理は禁物。家庭と両立しやすい会社であれば長続きしやすく、日々のストレス・疲れも軽減できます。
ワーママが転職するときはどうしても転職先に求める条件が多くなってしまうため、自分のなかで優先順位をつけましょう。「通勤時間は片道1時間まで許容範囲」「土曜日は月1回まで出勤できる」など具体的な条件もあれば、事前に書き出しておくのがおすすめです。
フレックスやテレワークができる会社であればフレキシブルな働き方ができるので、子育てと両立しやすくなります。例えばテレワークができる場合、通勤時間を短縮できるので体力がまだ少ない乳幼児期に夕方以降ゆっくり自宅で過ごす時間を確保できます。フレックスタイム制度を導入済みであれば、乳幼児期に多い予防接種や通院などがある日でも欠勤することなく仕事ができるでしょう。
その他、会社ごとにオリジナルの福利厚生や働き方を推奨している企業も増えています。先輩社員の働き方なども参考にしながら、自分が入社した後のイメージを確立させていきましょう。
ワーママ比率が高い(ワーママに理解のある)会社であれば、万が一子どもの体調不良で仕事を休まざるを得なくなったときや、平日に保育園・学校でイベントがあるときにも融通できる可能性が高くなります。「お互い様」の精神でワーママ同士助け合える社風があれば、自分だけ後ろめたさを感じながら働くこともないでしょう。助けてもらったり助けたりを繰り返しながら勤務を続けることで、居心地の良い環境を作れる可能性も高くなります。
また、ワーママが少ない会社だからといって、必ずしもワーママに理解がないとは限りません。子育てを終えた世代が想像以上に優しくしてくれたり、若手が多い会社でも趣味のために積極的に休みを取る社風であったりする会社の場合、ワーママの居心地もよくなります。
育休中や育休終了と同時の転職を検討している場合、時短正社員転職に強い「ワーママ特化型転職エージェント」を利用するのがおすすめです。ワーママ特化型転職エージェントはその名の通りワーママの転職に強みがあり、乳幼児を抱えるママや子どもの進学に合わせて転職したママを多数支援してきた実績があるのがポイント。転職直後から時短勤務できる会社や、リモートワーク・フレックスタイム制度を導入済みの求人の割合が高く、理想的な転職先を見つけるきっかけとなります。
また、短期決戦が求められるワーママの転職をサポートするため、ピンポイントでのアドバイスやスピーディーな対応をしてくれるのもメリット。育児休業給付金や、複雑な失業手当の条件まで詳しく指導してくれるので、金銭的にも損のない転職が可能です。
育休中の退職・転職であっても、退職日が属する前の支給単位期間までは育児休業給付金を受給できます。やむを得ない理由で退職するのであれば、これまで受給した育児休業給付金を返還する必要はありません。退職日によってもらえる育児休業給付金の額が変わるので、なるべく損のない計画的な転職活動にしていきましょう。
リアルミーキャリアは、時短正社員およびワーママに特化した転職エージェントです。育児休業給付金周りの手続きや育休中転職に関するアドバイスも実施しているので、お気軽にご相談ください。「まだ転職するべきか決めかねている」「一度復職してから転職するつもり」などの相談も可能です。